24 旅する木、星野道夫さん [まち・みらい倶楽部2016年夏号]

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旅・詩・小説・写真に興味をもたれる人で『旅する木・星野道夫さん』をご存知の方も多いでしょう。アラスカが大好きで人生の旅を18年間暮らした。星野さんが残したものは幸福の実例を示した本だと言えましょう。
夜と氷河の凍りついた静けさ。どこかで氷壁が崩壊したのか。雪崩の音が聞こえている。波のようなとどろきはやがておさまり、いつもの石が岩壁にはじける音も闇の中に消えていった。『ルース氷河、から引用文』 まるで私たちが存在する社会を表現しているかのような一節だと私は繰り返し読む。
いま関西まちづくり協議会が向き合っている『まちづくり活動』が意味するものは無限大。観光振興を目指すことや、シャッター通りの生活圏改革改善を図り、自然災害に直面する人びとが幸せになれる道を一緒に模索することなども、立ち位置により手の届く範囲から星空彼方の夢見る世界まで私たちの活動は広がっていく。だから昔ながらの、と言う紋切り型の常套句で語られがちな歴史ある地域で、暮らす人々の生活史を理解しないと上っ面な判断ミスを犯すことになる。
ややもすれば目の前にある矛盾追及を図り、早急な道筋を模索して壁にぶち当たることもある。しかしながら、現状にいたるプロセスを認識してみれば、決して誕生したままに物事が維持保存されて今日があるのでないことを知る。社会的に紆余曲折があり、いまが有ることを省みて日本的な消費社会が横たわっていることを知る。いわば民主主義社会のありがたさを知りながら、消費社会を優先するわが国の現状があるように、いまいちど人々の生活が千年前の都との違いを知る時に。貧困問題や差別の今日的課題に関わる機会と向き合い、決してたんなる地形の高低差で社会の高低差に繋がるものでないことを痛感する大切さが横たわる。
つまるところ自身が直面する課題と取り組むときには、周りの人々の生活が抱く友愛と結びつける努力がなければ空理空論となるのです。『一歩ずつ・一歩ずつ』。

 

代表理事 塗田敏夫